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SIMPLE UNIVERSAL
つくり方からつくる川村真司の仕事術

2012.10.24

 

 みなさん、こんにちは。はみだし泰造です。
 9月11日に行われたはみだし塾のゲスト講師は、クリエイティブ・ディレクターの川村真司(かわむらまさし)さんでした。講演タイトルは、「つくり方からつくろう」。事前に打ち合わせさせていただいた席で、躊躇せず決まったタイトルでした。
 ぼくが初めて川村さんの作品に触れたのは、博報堂在籍中に企画され海外のディレクターを起用したというJINROのCM。夜、街角でひとりの男がふと見上げると、ガラス越しに、オフィスのなかで数人の男女が♪JINROのサウンドにあわせて踊っている。しかも、どことなくズレた、振りのバラバラなダンス。なんだかわけがわからないけれど気になって仕方がない、結果的にJINROというお酒の"自由な気分"だけはしっかり伝わるCMでした。そして、比較的最近になって、川村さんが手がけたSOURというバンドの「半月」や「日々の音色」、andropの「Bright Siren」といったミュージックビデオを見ました。これらは、ぼくがこれまで見てきただれの作品とも違うものでした。シンプルで、だれにでも伝わる(言語や感覚の違いを超えてボーダーレスに)、なんともクリーンなアイデアで作られたものだったから。
 「クリーンなアイデア」なんて言い方があるのかどうかわかりませんが、明晰な頭脳と、人への公平な開かれた姿勢から生まれる、一点の曇りもない表現。川村さん自身が、もっと適切な言葉で表現してくれました。SIMPLE UNIVERSAL(シンプルでユニバーサルな表現)を目標にしているのだと。
 けっしてメジャーなアーチストのMVではないのだから、予算は限られているでしょう。それを乗り越えるのが、アイデアの力。本質を掘り下げて、伝えたいことの核心にたどりつけば、一見困難な課題もまるごと解決できる作り方が見えてくる。ぼくらの手や、影や、スカイプやビデオチャットや、ストロボ付きカメラや、つまり身近にある、ありふれた素材や手法で、見たことのない表現ができる。川村さんのクリエイティブは、課題を解決して行くプロセスそのものが表現になっていくおもしろさなんですよね。
 CREATIVE PROCESS、つくり方からつくる。
 あれができない、これができないと言う前に、考え方から作って行こう、という明確なメッセージがそこにはあります。彼こそ、とてもラディカルなクリエイターだと思います。
 話題になるCMが、巨額の広告費や、有名タレントや、日本人にしかわからない言葉に頼ったものが多いなか、川村さんの作品は、とても愛にあふれたものだと言えるのではないでしょうか? アフリカのこどもにも、中国の老人にも、ニューヨークのタクシードライバーにもわかるアイデア。最先端のコミュニケーションツールを使っていながら、どこか、文化祭でワイワイ言いながらみんなでモノづくりする楽しさが伝わってくるような表現。愛にあふれていると思いませんか?
 川村さんが手がけるNHKの番組「テクネ・映像の教室」のオープニング映像なんて、まさにそう。とても簡単そうなのに、ハッとするアイデア。でも、見るからに大変そうです。シンプルなアイデアをカタチにするって、実は壮絶に大変な作業だったりするんですよね。川村さんは、いつもテストやプロトタイプを作って、アイデアが実現可能かどうかを慎重に検証するとのこと。どの作品にも、ワクワクするような実験精神があります。
「見たことのないものを作って行きたい!」
 そう言い切るクリエイターが、いま、この国の広告業界にいることを、誇りに思います。

 さて、次回のはみだし塾は、高知を基点に、1980年代から、地域の価値を伝えるコミュニケーションのデザインに、一貫して取り組んでこられた梅原真さんがゲストです。ぼく、はみだし泰造は、一昨年梅原さんに出会い、大きな影響を受けました。これまで広告業界にいるぼくらに、何が欠けていたか。これから、ぼくらは、日本は、どこに向かうべきなのか。梅原さんの仕事には、多くのヒントがあります。ちょっと大げさかもしれませんが、ぼくらの生き方が変わるような何かが、そこにあると思っています。「特に、広告業界にいる人に向けて講演して欲しい」とお願いしたところ、「だまって買う、祈る、当たる。」という講演タイトルになりました。おもしろい話が聞けそうです。どうぞ、お楽しみに!

はみだし泰造