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■■■■今までのコラム■■■■

なぜ、いま、梅原真か?
〜「考え方をデザインする」という発想〜

2012.11.26

 

 みなさん、こんにちは。はみだし泰造です。
 10月26日のはみだし塾は、高知県在住のデザイナー・梅原真さんをお迎えして行われました。
 え!?高知県のデザイナー?
 東京で活躍する有名デザイナーがあまたいるのに、どうして高知?
 地域で仕事するクリエイターの話を聞いておもしろいの?
 ......と、10年前、いや数年前でさえ、多くの人が思ったに違いありません。しかし、当日会場に集まった100名近くの参加者は、すでに梅原さんの仕事を知っているか、地域発信のデザインに興味津々の人たちばかり。少なくとも、テレビや雑誌で見たことあるな、という人は多かったはず。それほど、いま、もっとも脚光を浴びているデザイナーと言ってもいいと思います。それは、なぜか。
 講演のテーマは「考え方をデザインする」でした。そうなんです、目の前の課題をしゃにむにカッコよく解決する前に、まず、発想を変えなければならない。発想そのものからデザインしなければならない。「押す」ことから「引く」ことへ。「プラス」から「マイナス」へ。梅原さんがこれまで地域で展開してきた「デザイン」という名の仕事は、「貧しい」とか「何もない」とか「ありふれている」という、地域の人のモノや自然に対する考え方を、根底から問い直す作業の連続だった("闘い"と言ってもいいかもしれない)と思います。真の豊かさとは何か。特に都会にあるモノと比べて、価値があるとか、ないとか考えるのではなく、そこにある絶対的な価値、つまりかけがえのない個性を大切にすること。都会の真似をしたデザインを欲しがる前に、足もとにある価値を見つめ直して、マイナスだと思っていたことをプラスに転じるためにこそ、デザインの力を使うこと。
 「何もない砂浜こそ世界に誇れる美術館だ」という発想(砂浜美術館)。
 漁師が自分たちのために焼いた鰹こそごちそうだという発想(明神水産『漁師が釣って、漁師が焼いた』)。ありふれた新聞紙を、どこにでもいるおばちゃんが頑丈に仕立てたバッグこそ美しいという発想(新聞バッグ)。
 「絵師の金蔵」こと、絵金の絵を、クーラーが効いた美術館ではなく、真夏の夜、町中の電気を消してろうそくの明かりだけで見るという発想(赤岡町・絵金祭り)。
 ただの廃材だった檜のチップに檜の香り成分をしみ込ませて、何億円もの利益を生む商材に変えてしまう発想(四万十ドラマ・四万十のひのき風呂)。
 他の有名産地に混ぜられるだけだったお茶を、独自の地域ブランドに変身させる発想(広井茶生産組合『しまんと緑茶』)。
......などなど。どの事例からも、ただパッケージやロゴやカッコいいネーミングをするというレベルのデザインではなく、考え方から設計するのだという強い意志が感じられました。
 なぜ、梅原真なのか?なぜ、彼が注目されるのか?
 もちろんその背景には、いま地域社会の疲弊と、その活性化に関心が集まっているという現実もあるでしょう。でもそれ以上に、いま、真に豊かなこととは何かを、日本に暮らす者全員が根底から問い直さなければならないという時代にわれわれが生きているからなのではないか。田舎も都会も関係なく、産業とデザインの境目もなしに。そんなことを考えさせられる講演でした。梅原さんのお話は、私たちからすれば遠いところ、彼の活動拠点である高知の事例が中心でしたが、おそらく参加者のみなさんには、それぞれの立場で切実に自分の問題でもあったのではないでしょうか?

 さて、次回11月26日のはみだし塾のゲスト講師は、早稲田大学大学院教授の友成真一さん。実は、2010年から11年にかけて、はみだし泰造こと、今村直樹が大学院で学んだ際、もっとも影響を受けた先生なんです。先生の「哲学」を支えるのは、なんと!「タコつぼ理論」というもの。先生ご自身が言っていらっしゃることなんですが、怪しげですよね〜(笑)。でも、これが、現代社会が陥っている問題や闘争を解き明かす、かなり本質的な考え方だとぼくは思っています。そして、いま、広告の世界にある問題も、この「タコつぼ理論」で解明できる! いつか、このはみだし塾でみなさんに紹介したいと願っていました。どうぞ、お楽しみに!

はみだし泰造