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■■■■今までのコラム■■■■

生きることは、はみだすこと。
〜えぐちりかの「いきるアイディア」〜

2013.08.28

 

 みなさん、こんにちは。はみだし泰造です。
 前回の並河進さんから、初心に返って「いま、広告の世界からはみだすということ」をテーマに、さまざまな分野でご活躍されている方をお呼びしています。その2回目だった6月10日は、アートディレクターのえぐちりかさんがゲスト。並河さんと言い、えぐちさんと言い、「はみだす」と言うよりも、自分にとってやりがいのあるフィールドを探していったら、最初から広告の枠組みの外にいた、「自然とそうなっていた」という印象を受けます。そういうウェーブ、つまり「広告からはみだす」ことでアイデンティティーを獲得するクリエイターたちの波のようなものが来ているのかもしれません。
 題して、「いきるアイディア」。約2時間、これまでの仕事を中心に、アイディアの出し方、アイディアの実現の仕方を、「私なりの方法」として、1から12に分類してお話いただきました。当日ご参加された人は、こう思われたに違いありません。どれもが、気持ちのいいほどすっきり整理され、淀みなく話されていく。たいへんな思いをして、多くの人をまきこんで実現されたにもかかわらず、まるで自然にそうなったかのように。この明快さ、アイディアの明るさや強さは、何だろう?とぼくは考えました。
 結局、クリエイティブはひとりの人から生まれるんですね。最近の広告には、多額の広告予算があり、有名タレントが出て、時には競合で広告会社やクリエイターが決まり、多くの人や組織が関わっているのに、目立たない、届かない、オリジナルじゃないと感じるものが多い。それに比べると、えぐちさんの仕事には、コンセプトもコピーも、もちろんデザインも、ひとりの人(つまり、えぐちりかという人)の感性やアイディアから生まれてきた潔さのようなものがあると思うのです。その結果として、伝わるスピードが早い。ユーモアを感じる。
 ユーモアって、その人の知性や教養や心の余裕から生まれるものですよね。そう、まるで水の上を泳ぐ鳥のように。水面下のたいへんさ(えぐちさんのどの仕事を見ても、もう笑っちゃうくらい本人も関わる人もたいへんそう!)にもかかわらず、そこには、かわいらしさや、おかしさや美しさや、時には、ちょっとドキッとするエロやグロもあるけれど、何とも言えないユーモアを感じます。余裕を感じます。もう一度言うけれど、水面下のたいへんさ、必死さにもかかわらず。
 それは、いまの広告の世界では、やはり特筆するべきことだと言えます。そしてそれは、クリエイティブのまんなかにいるひとりの人から生まれている。そこが、重要。私が、あなたが、本当にやりたいことは、何か。あまりにも、広告の仕組みや事情が複雑になってしまったいま、まず、そこに立ち返ってみるべき時だと言う気がしています。「いきるアイディア」というタイトルの前に、「わたしが」をつけて、その日のえぐちさんのお話を、ぼくは聞いていたのかもしれません。
 さて、次回8月30日のはみだし塾は、博報堂ケトル代表の嶋浩一郎さんをお招きします。嶋さんと言えば、博報堂刊行の雑誌『広告』や、スターバックスコーヒーなどに置かれた新聞『SEVEN』などのエディトリアル、2012年下北沢にオープンした本屋B&Bなどで有名ですよね。まさに、ユニークなはみだし方をしている人です。先日の打ち合わせで、開口一番、「広告って、PR(パブリック・リレーションズ)の一部に過ぎないんですよね」とおっしゃったのが印象的。スケールの大きい考え方、そして、単なるマスじゃないコミュニケーションを模索している人だという印象を受けました。題して、「最新PRテクノロジーから書店経営まで 博報堂ケトル嶋浩一郎の企画のつくりかた」。どうぞ、お楽しみに。

はみだし泰造