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■■■■今までのコラム■■■■

お前はただのコンテンツにすぎない。
--氏家夏彦さんのテレビ進化論--

2014.06.02

 

みなさん、こんにちは。塾長の今村直樹です。
これまで、広告やデザインの世界を中心にゲストをお呼びしてきたはみだし塾も、この回から、テーマやジャンルをすこし広げてみたいと考えました。さしあってのテーマは、「メディア」。テレビ、新聞、雑誌など、エンターテイメントビジネスや報道といったジャンルに身を置き、そこからはみだす活躍をされている講師の方々にご登場願います。未来のメディアのありかたを、みなさんといっしょに学び、考えていきたいと思います。どうぞ、ご期待ください。

トップバッターは、TBSメディア総合研究所代表取締役の氏家夏彦さん。
ぼくとほぼ同年代、ということは、テレビの黄金時代末期に業界に入られ、大きな地殻変動の時期に突入した現在に至るまで、内側から「テレビのいまと未来」を考え続けてこられた方です。
氏家さんは、いわゆるテレビの視聴者を「ユーザー」と呼びます。また、テレビの役割を「サービス」と端的に言い表します。そこには、氏家さんによる未来志向の「テレビ観」が集約されている気がします。
ユーザーという言葉には、お茶の間で受動的にテレビを見ているのではなく、ある意志を持ってテレビと対等な関係を築く人々の姿が浮かび上がります。もはや、テレビ視聴者は、場所も、時間も、チャンネルも超えて、自分の都合に合わせて番組を選ぶ存在なのです。そして、ただ「見る・楽しむ」を超えて、テレビは「認知する・調べる・買う・楽しむ」というような主体的なアクションとリンクしていく時代です。
サービスという言葉には、放送局からお茶の間の受像機(テレビ)へ、ただ番組を流すのではなく、より多様なメディア接触のあり方を通して、いかにコンテンツを届けるか。そういう発想にシフトしていこうとする、放送人としての強い意志が感じられます。

氏家さんの未来のテレビ構想のひとつに「全局全番組見通しサービス」というものがあります。局の垣根を超えて、ユーザーはメタデータプラットフォームにアクセスし、自分が見たいと思う、あるいは必要とする、そして見逃した番組に、いつ、どこにいても視聴が可能なサービスを受ける。つまり、[いつでも視聴]×[どこでも視聴]にこそ、衰退しつつあるテレビが、もう一度活性化する道があるという考え方です。
視聴者をユーザーと考え、テレビの役割をサービスと考えるなら、それは容易なこと。いや、テレビから、ソーシャルメディアへ、ネットへとメディアの主役が交代しつつある今日、それらとの連動なくしてテレビの未来はないだろうし、すでにまずはコマーシャルから「見逃したらネットで、YouTubeで」という連動がはじまっているのが現実です。

そんな氏家さんのお話を聞きながら、なつかしい一冊の本を思い出しました。学生時代に夢中になった『お前はただの現在に過ぎないーテレビに何が可能か』という、TBSから独立してテレビマンユニオンを立ち上げた3人のテレビマン(秋元晴彦・村木良彦・今野勉)による著書。テレビの中継性(いま、そこに起こっていることを映し出す機能)にこそ、テレビの可能性があると主張した内容だったと記憶しています。それから40数年の時を経て、テレビはさまざまなコンテンツを供給する「だけの」装置へと変化しようとしています。そこには、現在とか、過去とか未来といった時間軸さえ、もはや存在しないでしょう。近い将来、映画もテレビ番組も、もしかしたらCMも、時も場所も選ばない横並びのコンテンツになっていくのかもしれません。
テレビマンたちよ、いまこそ、テレビの概念を変える時だ! 氏家さんの講演からは、そんな過激でポジティブなメッセージが聞こえてきそうな気がしました。

さて、次回のはみだし塾は編集者の菅付雅信さんをお迎えして、テレビから一転、単に雑誌やウェブにとどまらない、広義の編集の世界で、私たちの生き方はどう変わっていくのか、行かざるを得ないのか。そんなお話を伺いたいと思います。題して「人生の編集、人生の作品化」。刺激的なお話が聞けそうです! どうぞ、お楽しみに!

はみだし泰造