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クリエイターのエージェント業という革新!
〜佐渡島庸平の新しさと本質〜

2014.09.19

 

みなさん、こんにちは。塾長の今村直樹です。

829日に行われた第21回はみだし塾は、マンガ作家を中心とするクリエイターのエージェント会社・コルク代表の佐渡島庸平さんをお迎えして行われました。

マンガは、数十年来、日本の文化に大きな影響を与えてきました。いわゆるサブカルチャーの中でも、ポップミュージックに並ぶ存在だし、多くの傑出した才能がそこに集まっています。マンガとさまざまな作家を育ててきたのは、言うまでもなく雑誌、つまり出版メディアであり、編集者です。週刊漫画雑誌から単行本が生まれ、映画やアニメーションや舞台などが世間をにぎわし、ヒット曲や流行、時には世相さえ生み出してきました。しかし、メディア中心の発想から抜け出し、マンガをひとつのコンテンツとして世に送り出していく。新しいビジネスのカタチ、新しい編集者と作家の関係性を生み出している人がいる。それが佐渡島庸平さん。いま、注目の編集者です。

佐渡島さんは、講談社時代に手がけた「ドラゴン桜」や「宇宙兄弟」の編集者として有名ですが、いまはコルクという会社をベースに安野モヨコ(『鼻下長紳士回顧録』、小山宙哉(『宇宙兄弟』)、三田紀房(『インベスターZ』)など、作家・作品のエージェント業に挑戦しています。その業態の新しさが、疲弊し続ける漫画ビジネス、出版業界に風穴を開けるものとして各界から大きな関心を持たれています。

作家を、見出し、育て、守る。出版業界や雑誌のためではなく、作家のため、作品のため、読者のために。そして、作家と作品を、時代を超えて、あらゆるジャンルと世界につなげていく。その意志は、時を超え、国境を越えて、世界に運ばれるワインのための「コルク」のような存在でありたいという、社名に明確に表現されています。作品を、従来のメディアに従属するモノとしてではなく、ひとつのコンテンツとして捉えること。その価値が真に生かされ、作家の権利が正当に守られるために、メディアを縦横に選択して、新しい流れと仕組みを作ること。それは、出版業界だけでなく、テレビや映画などの映像産業、広告、音楽業界など、あらゆるメディアが直面する歴史的な課題です。

でも、佐渡島さんのお話を聞きながらぼくが思ったことは、その新しさではなく、むしろ本質的な価値観の重さと大切さでした。

確かに、従来の「編集者が作家に頼むという構造」から「優秀な編集者に作家が依頼してくる時代」へというパラダイムチェンジは新しい。でも、たとえば

「ビジネスとは心の動いた量をお金に換えること」と佐渡島さんが何気なく語る言葉は、本質的です。あるいは、「売るものをモノにしてはいけない。出版は本を売る会社だが、コルクは魂の食い物を作る会社だ」という言葉には、コンテンツを扱うことをビジネスにしているすべての人が忘れてはいけない真理があります。考えてみれば、作家も作品も、もちろん著作権等の権利は守られていたにせよ、出版業界を支えるため、そこから派生した映画やアニメ番組のためにと、ある大きな産業構造の中に組み込まれていたんですよね。でも、読者が多くの情報を、パソコンやスマホ、ネットやSNSで得ている時代には、いわゆるヒット作品もそこを無視しては生まれてきません。どうやって読者にコンテンツを接触させるか、どう流行らせるか、どのように残していくか。新しいのは、そのためにエージェント業と言うシステムを生み出そうとしていることであって、根底にあるには、ほんとうに価値のあるものを伝え、守っていきたいという「まっとうな」意志なのだと思います。その本質と、時代の変化に柔軟に対応する姿勢との絶妙なバランスこそ、佐渡島さんの真骨頂であり、いまさまざまなジャンルの人から注目される所以なのだと思いました。

佐渡島庸平、まだ35歳という若さです。10年、20年の後には、たいへんな「財産」を残しているに違いありません。もちろん、お金ではなく、作家からの絶大な信頼、あるいはコンテンツと世界をつなげるプロデューサーとしての名声という「財産」を。

 

はみだし泰造