NEWS

■■■■今までのコラム■■■■

テレビという「沈み行く船」のしたたかさ。
〜福原伸治から見たテレビの行方〜

2014.12.11

 

みなさん、こんにちは。塾長の今村直樹です。

1024日のはみだし塾は、フジテレビの福原伸治さん(報道局次長、プロデューサー/ディレクター)を講師にお招きしました。題して「テレビと外部 いままでとこれから」。

タイトル通り、まさにテレビの内側で深く制作に関わってこられた方の視点から、外部、すなわち1980年代以降の視聴者やメディア環境の変化とどう折り合ってきたか、そして、これからテレビはどうなっていくのかが興味深く語られた2時間でした。

ひと言で言うと、「テレビと外部のいままで」は、逞しくかつ貪欲に、メディアやテクノロジーの変化を取り込んできた30年だったのだなぁと、福原さんのお話を聞きながらつくづく思いました。デジタル化への助走だった1980年代。福原さんは「TV's TV」という、ファミコンのゲーム感覚を取り入れた"コンテンツ時代の予言的番組"を手がけます。1990年から始まった科学情報番組「アインシュタイン」は、デジタルやCGの要素を取り入れて"バーチャルセット時代の到来"を告げるものでした。1992年スタートの生番組「ウゴウゴ・ルーガ」では、CGの新たな表現にいち早く挑戦。2000年の「秘密クラブodaiba.com」では、インターネットとテレビの連動に取り組む。そして、2005年の教育番組「ガチャガチャポン!」では、<ネットとテレビの融合>をさらに進化させて、ご本人曰く「コンビニ学問化」の実現を図ったのだとか。

福原伸治という人自身が、<デジタル化とネット時代の到来>という時代の変化を果敢に生き抜いてこられたのだと思います。そして、そこにあるのは、まぎれもなく時代と伴走してきたテレビというメディアの貪欲さ、あえて言うなら、したたかさです。

では、「これから」はどうなのか? テレビの未来は「沈み行く船」だと、福原さんはサラッと言ってのけます。少なくともこれまでのような、番組のつくり手から視聴者へ、一方通行的に、ただ情報や娯楽を垂れ流しするだけのツールではなくなっていく。ふたつの重要なキーワードがありました。「ユーザー」、そして「共感」。これまで視聴者と言われてきたお茶の間の人々は、ユーザーとして、もっと主体的にテレビに関わる存在になっていく。これからは、視聴者もいっしょに番組を作っていく時代だし、またそうなっていかなければならないのだと。そして、そこに必要なのは、受動的なメディア接触ではなく、テレビの内部の人も外側の人も、相互に発信者になっていくための「共感」なのだ。

ん!? どこかで聞いたことがあるような...。そう、しばらく前から広告の世界でも盛んに言われてきたこととまったく同じ。

一方通行から双方向へ。説得から共感へ。

インターネットの登場から、スマホやSNSの爆発的な普及に至って、広告もテレビも、根底から地殻変動が起きているのです。

でも「沈み行く船」としてのテレビが、「ユーザーとともに番組を作っていく」とか「共感」を生むと言っても、一体どうやって!? おそらく、そのためには「視聴率」という呪縛からもっと自由にならなければならないと思うのです。広告収入という存在基盤も前提ではなくなるでしょう。もっと地域に分散し、特定のコミュニティーのために存在する、たとえばBSやケーブルテレビのような道もあるかもしれません。広告に頼らずコンテンツを視聴することで収益を上げる仕組みも生まれていくでしょう。あるいはCMも、よりエンターテイメント性の高いコンテンツとして変化を遂げていく。ネット、とりわけSNSと一体になった「小さなテレビ」という考え方もある。ニコニコ動画がそうであるように。テレビという「沈み行く船」は、その、どれをも取り込んで、生き延びていくような気がしないでもありません。福原さんのような時代の変化への嗅覚に優れた制作者もたくさんいます。荒波を乗り越えて、いや、それをも糧にして、「沈み行く巨船」は、悠々と、まだこの先も当分、大海を渡っているのではないか。いつかテレビは呼べない何かに姿を変えていたとしても。最後には、ふと、そんなことを思う2時間でした。

 

さて、「メディアのいまと未来」について考えてきたはみだし塾、次なるゲストはラジオから。テレビがいま、「メディアの王座」をネットに取って代わられようとしているとするなら、ラジオは50年以上も前から、テレビの登場によってその存在を危ぶまれてきました。でも、いろんな時代を乗り越え、流行を生み、役割を変えながら、いまもしっかり生活に根付いています。ラジオは、どう生き伸びてきたか。岐路に立つテレビやCMにとっても、興味深いテーマです。ニッポン放送のプロデューサー・節丸雅矛さんにお話をうかがいます。これは聞き逃せません!

はみだし泰造