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■■■■今までのコラム■■■■

まったく新しい、そしてどこか懐かしいリーダーの登場!
〜2020年東京オリンピックに向けたパナソニックのイノベーション〜

2015.08.31

 

 これまでのはみだし塾は、いわゆるクリエイターやメディアの側の人たちを、ゲストとしてお招きしてきました。そろそろ、モノづくりをする側の人たちや売りの現場のまっただ中にいる人たち、つまりぼくらがクライアントやマーケッターと呼んでいる人の話を聞いてみたい。そこではいま、どんな変化と改革が起こっているのか知りたい。そんなことを思いました。そしてはじまったのが、「売る仕組みのイノベーション」と題するシリーズです。


 619日、そのトップバッターとして登場していただいたのは、パナソニックで、AV製品の広告クリエイティブを統括する新宮俊夫さんでした。

 新宮さんの講演タイトルは『コミュニケーションをデザインする』。はみだし塾に何度か参加してくださった人ならすぐにわかるはず。いまの広告やデザインを考える上で大切なことは、これまでの「伝わる」や「伝える」の仕組みそのものを疑い、変えることだ。言い方に多少の差はあっても、はみだし塾に登壇した多くの人が語ってきたことです。立場が違っても、抱える課題は同じなのです。(新宮さん、風貌からして、クライアントと言うより、まるでクリエイターですけど...笑)


 パナソニック、つまりひと昔前のナショナル(松下電器業)。そこで新宮さんが担当されるAV、特にテレビと言えば、冷蔵庫やクーラーなどと並んで、家電メーカーの屋台骨であり、広告としても常に時代を象徴するものでした。その「テレビの売り方を変えて行く」というのが、新宮さんの立ち位置です。つまり、新製品の機能やイメージを訴求するのではなく、VIERAを、Panasonicを、広告のつくり方から変えながら、まったく新しいブランドとして人々の記憶に刻んで行く。共感を生み出しながら、ファン作りして行く。そんな強い思いが、新宮さんを突き動かしているようです。

 その先にあるのは、2020年東京オリンピック。

 経済や流通で、著しく東京一極集中になってしまったいまの日本。その一方、地域では少子高齢化が進み、経済的な疲弊や都会への人口流出に歯止めが利きません。日本の未来を語る時、東日本大震災からの復興、地域の活性化や地方創成という課題抜きには語れないでしょう。地域にこそ、この国の「人間的な」豊かさという資産が眠っているのだから。

 一方、日本の広告もまた、テレビを中心とするメディアの一極集中のまっただなかにありました。ネットやSNSが急速に普及する、ついこの前までは。その広告を支える意思決定のメカニズムも、企業のトップを頂点とする一極集中を免れませんでした。いや、むしろ最近では、多極分散になっていたのかもしれない。従来の広告手法では「売れない」「効かない」という負のスパイラルの中で、クライアントの中も一枚岩ではないという現実に多くのクリエイターが接してきました。


 だからいま、2020年東京オリンピックに向かって、地域からコミュニケーションを積み上げて行く。パナソニック社内スタッフとのコミュニケーションも、<ヨコの関係>に変えて行く。6年かけて、TokyoではなくJapan、ビューティフルジャパンというコンセプトのもと、テレビの売り方を変えて行くのだ...。

 そんな新宮さんの講演を聞きながら、ぼくの頭の中を駆け巡っていたのは、プロジェクトの新規性ではなく、むしろ、それこそが広告の王道ではないかという思いでした。製品やブランドをまんなかに置き、広告に関わるすべての人の思いをひとつにする。関係をフラットに。

 経済が好調で、モノが売れに売れ、カリスマ性のある創業者がリーダーとして君臨していた時代とは違う。では、一体いまの新しいコミュニケーション環境のもとでは、誰が広告づくりのリーダーになるのか? そのとき、リーダーに求められる資質とは何だろう?

 コミュニケーションの変化に対応する、理屈ではなく肌感覚を持ったリーダー。ぼくらは、そんな人の登場を待っていたのかもしれません。メディアや広告や経済が一極集中していたであろう時代には、たとえば名物宣伝部長のようなリーダーがいました。でも、どんなに時代は変わっても、かつての宣伝部長が持っていたような「調整力と熱い思い」は、広告を作る上では、リーダーと呼ばれる人に絶対に必要なものだとも言えるでしょう。

 変化をとらえる肌感覚と、調整力と熱い思い。

 社内を、クリエイティブチームを、ひとつにまとめるべく奔走される新宮さんに、ぼくは、まったく新しい、そしてどこか懐かしいリーダー像を見る思いがしたのです。

はみだし泰造