第25回はみだし塾

2015.07.03

 

「はみだし塾」は、"学びと気づきの場"として2011年8月に開講し、今年で5年目を迎えます。2015年6月より、テーマを新たに「売る仕組みのイノベーション」として、モノを動かすこと(マーケット)に直接関わる人たちが、いま「消費者にどう向き合っているか」、「メディアに何を期待しているか、あるいは期待していないか」を学ぶ場にしていきます。

2015年6月19日、新宮俊夫(しんぐう としお)氏をゲストとしてお迎えし、「第25回はみだし塾」を開催しました。


Photo by Rika Maeda(hollyhock)
Tsutomu Ogino(hollyhock)

 


第25回 はみだし塾 概要

ゲスト: 新宮 俊夫氏
パナソニック株式会社 アプライアンス社コンシューマーマーケティングジャパン本部 コミュニケーショングループ クリエイティブチーム AVチームリーダー

テーマ: 2020年に向けた『ビューティフルジャパンプロジェクト』 ~コミュニケーションをデザインする~

メーカー企業で24年間広告制作に携わり、売るためのプロモーションを大きく変えていかなければならないことを実感しています。それには単に商品や広告戦略を変えるだけではなく、仕事の流れや仕方、社内でのコミュニケーション、社外とのコミュニケーション、また自分とのコミュニケーションまでも変えるという考え方が必要のように思います。過去の常識が通用しなくなっている今だからこそ、新しい広告、新しい常識、新しい自分を作ることに日々生きがいを感じながらプロジェクトを推進しています。

プロフィール: 京都市立芸術大学デザイン科卒業。1992年松下電器産業株式会社入社(現パナソニック株式会社)
当時の宣伝事業部配属、以来年間社内クリエイティブ担当としてコンシューマー向けのAV製品(VIERA、DIGA、LUMIX、オーディオ製品等)のネーミング、プロモーション、広告企画制作。ACCグランプリ、電通賞グランプリ、フジサンケイ広告大賞等数多く受賞。現在、AV商品クリエイティブリーダーとして、2020年に向けた「ビューティフルジャパン2020」を立ち上げ6ヵ年プロジェクトを推進中。
ビューティフルジャパン公式サイト: http://panasonic.jp/olympic/bj2020/

(講義内容抜粋)
講義では、プロジェクトの紹介を中心に、「メディア戦略を変える」、「コミュニケーションを変える」、「制作スタイル(広告づくり)を変える」ということについて語っていただきました。

「ほぼ、一対一プレゼン。ほぼ、毎日プレゼン。」
「ビューティフルジャパン」はトップダウンではなく、現場の提案から動き出したプロジェクト。
商品広告にも関わらず機能について語らないブランド訴求のプロモーションについて、「もっと商品のことを言わなければいけないのではないか?」、「時期が早すぎるのではないか?」という意見の人に対し、まずは「社内のコミュニケーションの仕組み」を変えていく必要があった。全体が集う場ではなく、役員、責任者、担当者に対し、ほぼ一対一でプレゼンを続け、普段は広告をプレゼンしない部署にも通い、ほぼ毎日プレゼンした。納得してくれる人もいれば、違う見方をする人もいる。そういう人に対しては理解してもらう材料を揃える。手間と時間をかけ、粘り強く対話を続けることにより賛同者が増えプロジェクトを実行することができた。

「縦の関係から、横の関係へ」
これまでの広告制作において、クライアント、代理店、プロダクションは縦の関係だった。しかし、「ビューティフルジャパン」は、フラットな関係でひとつのチームとしてプロジェクトを推進している。コンセプトをきちんと理解し、良い提案をする人は全員メンバーだという仕事の仕方。メンバーは仕事をさせられているというのではなく、自分が主体的にやろうというオーナーシップを持っている。なぜ、こういった関係性が作れるのかというと、全員の目指すものが一つで、コンセプトを深く共有し、日々のコミュニケーションも大切にしているから。関係性を縦から横にし、メンバーが同じ想いで発想すると、事情に絡まない自由なアイディアがうまれ仕事がどんどんひろがる。実際に現場の新入社員がポロっと口にしたコピーを採用したこともある。「チームBJ」のスタッフは、2015年6月時点で282名。スタッフリストには参加した人を全員載せており、2020年まで何千人と増えていく。
肩書なしの「チームBJ」スタッフリスト: http://panasonic.jp/olympic/bj2020/teambj_staff.html

「機能広告から、ブランド広告へ」
「ビューティフルジャパン」は、オリンピックを美しく観よう、オリンピックでこの美しい国を一つにしようというプロジェクト。そのためには、極力商品のことを語らずに、ものづくりに込めた想いを伝えていくファン作りの方がよいのではないか、そんな話をしながらブランド広告にした。AVの商品広告で、商品を語らずコンセプトだけを掲出したのは社内でも初の試み。オリンピックを目指す子供たちが「夢のためにすべてを捧げる」姿、いきいきと美しく佇んでいる姿をドキュメント仕立てに演出をしない演出をしようという想いをチームで共有し作っている。

「地域に根ざした長期的な戦略へ」
スポット中心の短期的な全国一斉投下型ではなく、地域に根ざした長期的戦略へプロモーションのかたちを変えた。一般的に撮影は非公開で行われるが、アスリートの家族、地元メディア、地域の量販店や専門店に対し撮影を公開している。そして、皆が楽しみながら撮影に参加している現場の様子が地元メディアに取り上げられ、撮影エリアでは、完成品をメディアに露出する前からファンの拡がりをみせている。完成後の露出は地域限定広告が中心。それぞれの土地にカスタマイズし地方の風景を取り入れた広告は地元でも好評。これら地域に根ざしたプロモーションの効果は数字にも顕著に表れており、手間と時間はかかるが地域に特化したプロモーションは、より深く消費者に届くことを実感しはじめている。撮影に社内の経理部門の責任者に参加してもらうこともある。書類上の金額だけ見ている時は、「高い!」といっていた人が、チームのひとりとして参加した後は「なるほど!」という見方に変わってくれるなど、撮影現場は社内のコミュニケーションを深める場にもなっている。

「コミュニケーションをデザインする」
今までの常識をやぶり、仕事に関わるあらゆるところにオリジナルのコミュニケーションを模索することが大切。変化を起こすと予想もしていない新しいことが起こる。新しいコミュニケーションを始めて、マイナスになった経験はない。基本的にコミュニケーションをとればとるほど可能性が増えてくる。プレゼンとローカルプロモーションは、一対一、一人ひとりに向けたほうが深くささるという点において非常に似ている。全員に話すよりも、一人ひとり個別に話しかける方が理解が深まり、組織としての取り組みとして自分ごと化してもらえる。

「自分とのコミュニケーション」
新宮氏は仕事をする時、常に自分自身に問いかけ会話をしている。大切にしているポイントは次の3つ。
「迷ったときはしんどいほうを選ぶ」 ラクしようとしていないか?
「人が喜ぶことをまず考える」 自分の得が先に立っていないか?
「社内の事情を深く理解した上で、従わない。」 社内の事情に消費者は不在、俯瞰して見ているか?これは、社内の事情を無視するという意味ではなく、深く理解した上で消費者の気持ちになって考えた企画を実行するための努力をすること。

「夢のためにすべてを捧げる」
「ビューティフルジャパン」プロジェクトのコピー。
これがすべて、2020年に向けてキーワードになるのではないかと思う。このプロモーションの中で新宮氏も好きな言葉。

講演の最後に、会場に駆けつけてくださった「チームBJ」のメンバーを紹介し締めくくりました。
新宮様、チームBJの皆様、本当にありがとうございました。これからの展開を楽しみにしています!